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京都府立大学
 大学院生命環境科学研究科 環境科学専攻
 生命環境学部 森林科学科
 
森林生理生態学研究室
Laboratory of Forest Ecology and Physiology
 
研究内容   
 
森林・樹木は、人類の生存に欠くことができない環境を構成するとともに、持続可能な資源として利用されています。森林・樹木は、一見、何事もなくその場所に存在しているように見えますが、実は、その場所の環境に適応することで、はじめてその場所に存在することが可能になります。もし、何らかの原因により、森林・樹木がその場所の環境に適応することができなくなると、その森林・樹木は衰退・衰弱し、最終的には枯死・消滅します。
 私たちの研究室では、自然環境の中で森林・樹木がどのように環境に適応して生存・生育しているのか、その環境適応メカニズムを解明することで、森林・樹木が衰退・衰弱する原因を究明し、森林生態系の保全、さらには持続的な森林管理に役立つ研究をおこなうとともに、地球規模の温暖化が森林・樹木におよぼす影響を明らかにする研究や森林の温室効果ガスの吸収・固定量を正確に推定するための研究をおこっています。また、私たちの研究室では、学術的研究のみにとどまらず、これまでに得られた研究成果をもとに文化財的価値を持つ森林を保全するための実践的な研究をおこない、地域貢献にも取り組んでいます。
 
 
主な研究テーマ   
樹木の環境適応メカニズムの解明 −温暖化が森林・樹木におよぼす影響を予測−
●高山域の森林限界付近に生育するオオシラビソとハイマツの環境適応メカニズムの解明 
    北アルプス乗鞍岳(左)において、高山域の森林限界付近に生育する樹木が、厳しい気象条件にどうのように適応して生存しているのか、その環境適応のメカニズムについて研究をしています写真(中)はオオシラビソという樹木です。森林限界付近という極めて厳しい環境条件下に適応するため、樹形(木の形)を一般に見られる樹木の樹形とは大きく違う、複雑な形に変化させ生存しているのが解ります。
 また、このような森林限界付近では、環境変動、つまり気温の温暖化の影響が、いち早く現れると言われています。このような地域に生育する樹木を研究することによって、これから生じるであろう地球規模の温暖化が、森林・樹木にどのような影響をおよぼすかを予測することに役立ちます。
  





 
   
 森林生態系の保全 −森林・樹木の衰退・衰弱原因の解明−
●沖縄県宮古島に生育するリュウキュウマツ林の衰退原因の解明 
 
   沖縄本島の南西約 300 km に宮古島があります。宮古島では、古くから防風林としてリュウキュウマツが植栽されてきました。現在では、リュウキュウマツ林は、防風林としての役割のほか、宮古島の景観を構成する重要な役割を持っています。しかし、近年、このリュウキュウマツ林の衰退が問題となっています。そこで私たちの研究室は、リュウキュウマツの水分生理特性を調査し衰退原因の究明をおこなっています。写真は、衰退の危機にある宮古島リュウキュウマツ林(左・右下)とリュウキュウマツの水分生理特性を測定している様子(左下)です。  
   
   
森林の持つ温室効果ガスの吸収・固定量能力の正確な推定
●急傾斜地に生育する高齢ヒノキの水分生理状態と成長との関係
 
   日本の森林が吸収貯留できる温室効果ガス(炭素量)を正確に推定するための研究をおこなっています。95年生のヒノキ人工林において、太陽光パネルを森林内に設置することで電源を確保し、様々なセンサーを森林内および樹木に設置し、森林内の環境条件、樹木の生理特性および樹木の成長量を調査することで、温室効果ガスの固定量を推定する精度を上げる試みをおこなっています。写真(上)は、各種センサーをヒノキに取り付けている様子、写真(下)は太陽光パネルです。

   
   
持続的な森林管理のための研究
●樹木健全度の評価法の開発
  
 森林を持続的に維持管理するためには、森林を構成する要素である個々の樹木が健全でなければなりません。そのためには、樹木の健全度を客観的かつ正確に把握する必要があります。しかし、樹木が健全であるかどうか、客観的かつ容易に評価する指標はいまのところありません。そこで、衰退しつつある京都府立植物園のサクラの生理特性の調査と、樹木を人工的に衰弱させて、その衰弱過程における生理特性の変化を調査することで、樹木の健全度を客観的に評価するための研究をおこなっています。写真(左)は、京都府立植物園での調査風景です。写真(下左)は、人工的に樹木を衰弱させながら、各種センサーにより樹木の生理特性の変化を測定している様子です。写真(下右)は、取り付けたセンサー類を制御し、測定データを記録するための装置です。 
 
   
研究成果の応用(地域貢献)−環境・文化財的価値をもつ貴重な森林の保全−
●天橋立マツ並木林の保全
●京都府立植物園サクラ林の樹勢回復
 
   私たちの研究室では、これまでに得られた研究成果を応用し、文化財的に貴重な価値を持つ森林を保全するための実践的な研究もおこなっています。写真は、日本三景の一つとして有名な天橋立の松並木です。私たちの研究室では、この文化財的価値の高い天橋立松並を保全するための実践的な研究もおこなっています。さらに、サクラ林再生プロジェクトとして、衰退の危機に瀕している京都府立植物園サクラ林の樹勢回復にも、研究成果を応用しています。私たち研究室では、このように学術的研究のみにとどまらず、得られた研究成果を文化的に貴重な森林の保護・保全に応用し、地域貢献をおこなっています。  
   

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